多様性を活かす職場風習へ
近年、世界でも性的少数者であるLGBTを保護する国が増え、日本でも、2017年3月、いじめ防止基本方針の改訂で、LGBT生徒の保護の項目が初めて盛り込まれました。
厚労省も2018年度の診療報酬改定で、性同一性障害者(GID)の性別適合手術(SRS)に対して公的保険の適用を決め、保護の傾向が強まってきています。
民間でも、自治体(渋谷区)の発行する「同性パートナーシップ証明書」によりパートナーへの死亡保険金の受け取りを可能にするなど、LGBTを自社サービスへ適応させている企業も増えつつあります。
しかし実際は、LGBTに対する差別や誤解、偏見によるいじめが依然として存在し、就労上の集団環境におけるカミングアウトはハードルが高いのが現状です。
日本労働組合総連合会が実施した「LGBTに関する職場の意識調査」によると、職場に同性愛者や両性愛者がいることに抵抗を感じる人は、3人に1人というデータも有ります。
職場では、同僚に避けられたり偏見を持たれたりすることに不安を感じる当事者も多く、LGBTへの接し方に戸惑いを感じる非当事者も増えてきています。
また、着替えやトイレ、同僚との会話など、自己のアイデンティティを隠し続けることや、受け入れられない環境に身をおくことへのストレスから、仕事に集中できない、会社に居場所がない、と、孤立をしてしまうケースもあります。
容姿の変容が徐々に伴うトランスジェンダーなどは、企業の集団健診や社内イベントなどの男女区別の慣習における物理的な環境問題に直面し、集団の中で働くことが難しくなり、企業にとって必要な人材であっても当事者自ら離職をするという深刻な問題となっています。
このままでは、雇用機会を扱う事業者は、求人企業に対して当事者の提案を積極的に行えません。
職場で働けなくなってしまったLGBTの人、働けないと思い離職してしまう人たちの中には、職業能力の高い人たちもいます。
妥協をできない個性はパフォーマンスを発揮する資質であると、少し見方を変えていただきたいのです。
企業や組織に、LGBTが働きやすい環境や風土を浸透させ、当事者がハンデキャップやストレス、劣等感を感じることなく、集団の中で公平にチャンスを手に入れる事ができる土俵を作ることが必要です。
当事者は、その土俵に立ち、職務能力を十分に発揮し、当事者自らが偏見や差別のない社会を切り拓いていくことが大切です。